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NPO法人「肺がん患者の会ワンステップ」 理事長 長谷川一男さん

治療を選ぶことは、人生を選ぶこと―
複数の“選択肢”から、自分らしい答えを見つけるために
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肺がんは、日本でも患者数の多いがんであり、その治療は年々進化しています。新しい作用の治療薬が次々と登場し治療選択肢が広がるとともに、個別化医療も更に進歩しています。
しかしがんの診断を受けた患者さんにとって、こうした複雑な情報を理解し、ご自身の状況に合わせて治療法を選ぶことは決して容易ではありません。
そこで今回、先輩患者さんであり、肺がんの患者会NPO法人「肺がん患者の会ワンステップ」の理事長である長谷川一男さんに、患者さんに求められる役割や姿勢についてお話しを伺いました。

「選択肢は1つじゃない」時代、患者さんに求められる“意思決定”

2010年、私が肺腺がんステージ4と告知された当時、私の病状に対する治療法は1つしかありませんでした。ですから、私は医師の説明を聞き、それを理解した上で同意し従うだけでした。
しかし今では、例えば日本肺癌学会の肺癌診療ガイドライン2025年版のガイドラインでは、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(エクソン19欠失またはL858R変異陽性)に対する一次治療には、4つの推奨治療があります。治療選択肢が1つしかなかった時代には、医師が治療の答えを提示してくれて、患者さんはそれに従ってさえいればよかったかもしれません。
しかし今は複数ある選択肢の中から、それぞれのメリットやデメリット、また自分の価値観に一番合ったものを選ぶという、意思決定が求められる時代になりました。

ただ、治療の選択肢が4つあるということを知らないままの患者さんも少なくないでしょう。例えば、医師からきちんと説明を受けていなかったり、限られた診察時間では十分な情報が得られなかったり。私たち「ワンステップ」では、そんな情報の発信を通して、患者さんが自分の治療や人生に主体的に関わっていく、向き合っていこうと呼びかけることを目的の1つとして取り組んでいます。
 

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当社が2025年7月に実施した、肺がん患者さんを対象に実施した調査によると、患者さんが初回で薬物治療を決める際に「非常に重視していた」ことで最も多かったのは、「生存期間を延ばすために、できるだけ効果に期待ができる治療を受けたい」が45%で、次に「家族や大切な人と一緒に過ごす時間をできるだけたくさん持ちたい」が40%という結果が出ました。
長谷川さんが肺がんの治療を決めた際のお気持ちを教えていただけますか?
 

【初回薬物治療決定時の価値観】

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「とにかく長く生きる」ため、答えを探し求め

診断された当時、まだ幼かった二人の子どもたちのためにも、効果が期待できる治療があるなら、とにかく少しでも長く生きたいと考えました。たとえ病気を克服することはできなくても、病気に対してきちんと抗いたいという気持ちもありました。
治療の過程において問題は起こりうるものなので、治療の内容をしっかりと知って向き合い、副作用があれば対処したり、次の治療の決定に自分の意思を反映したり。医師との話し合いを重ねながら、できることをやり切ろうと意識していたように思います。
また、肺がんについて基本的な知識を得るために専門書を読みましたが、実際の自分の病状や治療には必ずしも当てはまりませんでした。当時は情報も少なかったため、自分の足で情報を得ようと奔走し、セカンドオピニオンで数多くの病院を訪ね、気がついたら診察券は30枚になっていました。「とにかく長く生きる」ため、多くの医師からさまざまなアドバイスをもらっていたという状況です。

患者さんも、主体的に意思決定に関わる

そもそも「治療を受ける」という言い方がされますが、患者さんは受け身ではいけません。今は昔と比べ、複数の選択肢があるということ、治療法の具体的な情報など、患者さんは比較的入手しやすくなっています。肺がん治療について自分でできる範囲のことは予習しておくと、診察も意思決定もスムーズになるでしょう。医師にすべてを任せるのではなく、一緒に考えるという姿勢で治療に臨み、主体的に意思決定に関わることが大切です。その役割を自覚していないとただの傍観者になり、結局すべて受け身になってしまい、自分の価値観や希望を伝えられず、一般的な治療を選択したはずなのに、個人としてはその治療があっていなかったということが起こってしまいます。

「自分がやりたいこと、望む生き方」を医師に伝えて

一方で、がんの告知を受けた衝撃の中で、冷静に治療法それぞれのメリットやデメリットを考えながら選ぶことが難しい場合には、専門的な判断はプロである医師に任せてもいいと思います。むしろ患者さん側がすべきことは、自分が大事にしていることや望む生き方を医師に伝えて治療の選択に生かしてもらうこと。そのために効果的なツールが「ケアプランニングシート」です。趣味や好きな食べ物などとともに、例えば「1年後の孫の卒業式に出席したい」、「旅行へ出かけたい」といった、治療を続けながらやりたいことを記入して医師に渡すもので、一部の医療現場で使われています。もちろんシートでなくても、言葉で直接伝えてもいいでしょう。医師は治療の選択肢を患者さんに伝え、患者さんは自分の考え方を医師に伝える。その両方が合わさって理想的な治療に結びついていくのだと思います。
 
 

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治療方針を決めたら、前向きに、できる限りのことをしていく

どのような治療でも何かしらの副作用は起こりうるものです。副作用の現れ方は人それぞれで、きついかもしれないし、想定よりも軽いかもしれません。それを理解したうえで、「この治療をやる!」と決めたら前へ進むこと。不安ばかり抱くのではなく、医師、看護師や薬剤師の話を聞きながら予防できることは予防し、副作用が出たときの対処を適切にしていけばいいのだと思います。
治療選択における意思決定が重要なのと同時に、実はその後の対応もとても大切なのです。例えるならパイロット的な思考。仮にフライト中の機体にトラブルが生じたとき、パイロットは何よりも“生還”を最重要視して対応策を講じ、最大限の努力をするはずです。それとよく似ていて、患者さんは、方針を決定した後の治療をきちんと前向きに捉え、例えネガティブな状況が起こったとしても、問題に対してできる限りのことをしていくことが必要だと思います。
 

 
長谷川 一男さん

2010年、39歳の時にステージ4の肺がんと診断(喫煙歴なし)。
2015年特定非営利活動法人肺がん患者の会ワンステップを設立。ワンステップのビジョンは肺がんの患者・家族の「生きる勇気」を支え、肺がんのない世界を目指す。活動には3つの柱があり「仲間を作る」「知って考える」「アドボカシー」1ヶ月に1回のペースでおしゃべり会開催。HPとブログにて、様々なテーマで情報発信している。

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