※本プレスリリースは、10月24日に米国本社にて発表したプレスリリースの抄訳版です。必ずしも日本の状況を反映したものではないことをご了承ください。本資料の正式言語は英語であり、その内容及び解釈については英語が優先します。本資料(英文)については、 こちらをご参照ください。
ニポカリマブは、シェーグレン症候群に対し日本国内において未承認です。予めご注意ください。
シェーグレン症候群に対し現在開発中で、ファースト・イン・クラスのFcRn阻害薬ニポカリマブは、第II相DAHLIAS試験において主要評価項目を達成し、24週時点における11の主要な全身性疾患領域に基づくClinESSDAIスコアはプラセボ群と比較して統計学的に有意な改善を示した
ニポカリマブ投与群では、乾燥、疼痛、疲労など、患者報告によるシェーグレン症候群の重篤な症状がプラセボ投与群と比較して、改善傾向を示した
ニポカリマブは、中等度から重度の成人シェーグレン症候群患者を対象とする治療薬として米国食品医薬品局からブレークスルーセラピー指定を受けた唯一の治験薬 現在、第III相DAFFODIL試験の患者登録が進行中
ニュージャージー州ラリタン(米国時間2025年10月24日) – Johnson & Johnson(NYSE:JNJ、以下「J&J」)は24日、第II相DAHLIAS試験の結果を
『Lancet』誌に発表しました。試験の結果、シェーグレン症候群に対する治療薬として現在開発中のFcRn標的薬ニポカリマブが、中等度から重度の患者の疾患活動性及び重症度を有意に低下させたことが示されました1。
DAHLIAS試験では主要評価項目を達成し、ニポカリマブ15 mg/kgを2週間に1回投与した群は、プラセボ群と比較して24週時点におけるClinESSDAIaスコア(シェーグレン症候群の主要な疾患活動性指標)を統計学的に有意に改善しました1。主要バイオマーカーはプラセボ群と比較してb良好な変化(リウマトイド因子の低下、循環性免疫複合体の減少、炎症マーカーの低下など)を示し、疾患活動性の低下を裏付けるものとなりました1。
この疾患活動性の有意な低下は、シェーグレン症候群の患者さんの負担が、ニポカリマブによって軽減される可能性を示唆しています1。ニポカリマブ投与群の患者さんは症状の改善を報告しており、口腔乾燥、眼乾燥、及び/又は膣乾燥、さらには疲労、関節痛といったシェーグレン症候群に特徴的な症状において、プラセボ群と比較して数値的な改善が認められました1。また、客観的唾液量の改善(ベースラインからの改善率が50%以上)が認められた患者さんの割合は、24週時点で、プラセボ群が16%であったのに対し、ニポカリマブ高用量群(15 mg/kg)では33%と2倍以上となりました1。
カンザス大学メディカルセンター、アレルギー・臨床免疫学・リウマチ学准教授であるGhaith Noaiseh(M.D.)cは、次のように述べています。「第II相DAHLIAS試験は、FcRn阻害をシェーグレン症候群の治療アプローチの可能性として理解するうえで重要な一歩を示しています。疾患活動性に臨床的に意義のある改善をもたらし、主要な生物学的指標を低下させたニポカリマブは、自己抗体によって引き起こされるこの複雑な疾患の病態に、1つの対処法を示すことになるでしょう。ニポカリマブはIgG自己抗体濃度を迅速かつ可逆的に低下させると考えられ、この効果はFcRn阻害の作用機序と一致しています。また、免疫系を広範囲に抑制することなく効果が発揮されます2,3」
ニポカリマブの安全性プロファイルは、忍容性が良好であり、24週間の治療期間中に新たな安全性シグナルは認められませんでした1。循環免疫グロブリンG(IgG)濃度が著しく低下した患者さんにおいても、免疫機能は治療期間を通じて維持されました1。重篤な感染症の増加は認められず、免疫グロブリン静注療法(IVIG)又は救援療法を必要とした患者さんはいませんでした1。DAHLIAS試験のデータは、全身型重症筋無力症(generalized myasthenia gravis:gMG)で承認されているアイマービーTMの全般的な安全性プロファイルと一貫していました4。
Johnson & Johnson Innovative MedicineでRheumatology and AutoantibodyのDisease Area Leaderを務めるLeonard L. Dragone(M.D., Ph.D)は、次のように述べています。「シェーグレン症候群の患者さんは10人中9人が女性であり、持続的な症状を抱え、多くの場合、易疲労性を伴います。しかし、承認された治療薬がないため、治療に対する大きなアンメットニーズが存在しています5,6。『Lancet』誌に発表されたこれらのデータは、シェーグレン症候群に対するニポカリマブの可能性を裏付けるエビデンスの蓄積に、新たな知見を加えるものです。今回の発表は、この知見の科学的なメリットを明確に示すだけでなく、自己抗体が介在する疾患の研究を推進し、代替治療法の少ない患者さんに新たな治療薬を提供するという我々のコミットメントを反映しています」
ニポカリマブは、米国食品医薬品局(FDA)から ブレークスルーセラピー指定を受けたシェーグレン症候群に対する、現在開発中の医薬品です(2024年11月)。今年に入ってからは、2025年4月に米国FDAから Fast Track指定も受けました。そして、現在は 第III相DAFFODIL試験を実施中であり、患者登録が行われています。
アイマービー™は、FDAより抗AChR抗体陽性又は抗MuSK抗体陽性のgMG成人及び小児患者さん(12歳以上)に対する 承認を取得しています。ブラジルでは、ブラジル国家衛生監督庁(ANVISA)より抗AChR抗体陽性、抗MuSK抗体陽性又は抗LRP4抗体陽性の成人及び小児患者さん(12歳以上)に対する承認を取得しています。日本では、成人及び12歳以上の小児の全身型重症筋無力症に対する治療薬として承認されています。
保険当局への申請を通じたgMGの適応承認は、現在、世界各地の規制当局で審査が行われています。
用語の説明:
a. ClinESSDAIは、シェーグレン症候群に特異的な評価項目の1つで、11の器官系領域(皮膚症状、肺病変、腎病変、関節症状、筋症状、末梢神経障害[peripheral nervous system: PNS]、中枢神経障害[central nervous system: CNS]、血液障害、腺症状、健康状態、リンパ節腫脹およびリンパ腫)における器官別疾患活動性を評価する複合的尺度です。スコアが高いほど症状の重症度が高いことを示します。
b. 最小二乗 [LS]平均差:-2.65、信頼区間 [CI]:–4.03~–1.2、p=0.0018
c. Ghaith Noaiseh(M.D., Ph.D.)は、ジョンソン・エンド・ジョンソンのコンサルタントを務めていますが、メディアに対する活動についての報酬は受け取っていません。
シェーグレン症候群について
シェーグレン症候群は、自己抗体により引き起こされる、比較的罹患率の高い疾患の1つです。この疾患に対する根本的かつ全身的な治療薬として、現在承認されているものはありません7。シェーグレン症候群は慢性の自己免疫疾患で、世界全体で約400万人の患者さんがいると推定されており、男性より女性において9倍多く見られます5,6。シェーグレン症候群は、自己抗体の産生、慢性炎症、外分泌腺系のリンパ球浸潤を特徴とする疾患です。ほとんどの患者さんにおいて、粘膜乾燥(眼、口、膣)、関節痛、疲労が所見として認められます7。シェーグレン症候群の患者さんの50%以上が中等度から重度で、疾患に伴う身体的・心理的苦痛は関節リウマチや全身性エリテマトーデスと同程度になることもあります5。通常、生活の質の低下を伴い、最大で約半数の患者さんが機能的能力の低下を経験し、症状のために就労が困難になることもあります5,8,9,10。
DAHLIAS試験について
DAHLIAS試験(
NCT04969812)は、一次性シェーグレン症候群の患者さんを対象にニポカリマブの有効性を評価する、第II相、多施設共同、ランダム化、プラセボ対照、二重盲検試験です。DAHLIAS試験は、疾患活動性が中等度から重度の、成人の一次性シェーグレン症候群の患者さんで、抗Ro60抗体及び/又は抗Ro52 IgG抗体の血清学的陽性の患者さんを対象とする第II相用量設定試験です。18〜75歳の163人の成人患者さんを、2週間おきに22週間にわたって、治験実施計画書で認められた標準治療と共にニポカリマブ(5mg/kg又は15mg/kg)の静脈内投与を受ける群、プラセボ静脈内投与を受ける群に1:1:1に割り付けました。安全性評価は30週間にわたり実施しました。主要評価項目は、24週時点におけるClinESSDAIスコアのベースラインからの変化量でした。
アイマービーTM(ニポカリマブ)について ※以下は海外での承認取得状況です。
アイマービーTMはモノクローナル抗体であり、高い親和性で結合してFcRnを阻害し、全身型重症筋無力症(gMG)を引き起こす循環IgG抗体の濃度を下げつつ、他の適応免疫系及び自然免疫系にほとんど影響を与えないよう設計されています。アイマービー®は現在、米国では抗AChR抗体又は抗MuSK抗体陽性の成人及び12歳以上の小児を対象とするgMG治療薬として承認されています4。
「希少な自己抗体疾患」、母体の同種抗体が介在する「母体胎児疾患」及び「リウマチ性疾患」の3つの重要な自己抗体疾患を対象に、ニポカリマブの研究開発が行われています11,12,13,14,15,16,17,18,19,20。現在開発中のこのモノクローナル抗体は、高い親和性で結合してFcRnを阻害し、循環IgG抗体及び同種抗体の濃度を下げつつ、他の適応免疫系及び自然免疫系にほとんど影響を与えないよう設計されています。
米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)は、ニポカリマブに対して以下の重要な指定を行っています。
- 2019年7月に胎児新生児溶血性疾患(HDFN)及び温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)、2021年12月に全身型重症筋無力症(gMG)、2024年3月に胎児・新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)、2025年3月にシェーグレン症候群(SjD)に対するFast Track指定をFDAより受けました。
- 2019年12月にwAIHA、2020年6月にHDFN、2021年2月にgMG、2021年10月に慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、2023年12月にFNAITに対するオーファンドラッグ指定をFDAより受けました。
- 2024年2月にHDFN、2024年11月にシェーグレン症候群に対するブレークスルーセラピー指定をFDAより受けました。
- 2024年第4四半期に、FDAより、gMG治療薬として優先審査の対象に指定されました。
- 2019年10月にHDFN、2025年4月にFNAITに対するオーファンドラッグ指定をEMAより受けました。
アイマービーTMの法的製造業者(legal manufacturer)はJanssen Biotech, Inc.です。
Johnson & Johnson について
Johnson & Johnsonは、健康こそすべてだと考えています。ヘルスケアイノベーションにおける私たちの強みが、複雑な病を予防、治療、治癒し、治療をよりスマート化した低侵襲なものに進化させ、一人ひとりの患者さんに合ったソリューションを提供することができる世界を築く力になります。Innovative MedicineとMedTechにおける専門性を生かし、将来の飛躍的な進化に向けてヘルスケアソリューションの幅広い領域でイノベーションを推し進め、人々の健康に大きなインパクトを与えていきます。
日本におけるJohnson & Johnson Innovative Medicine について
Johnson & Johnson Innovative Medicine は、米J&Jグループにおける医療用医薬品事業の名称です。日本では、1978年の設立以来、これまでヤンセンファーマ株式会社として、患者さんの治療に貢献する多くの医薬品をお届けしてきました。私たちは、アンメットニーズに基づく開発戦略のもと、注力疾患領域―がん、免疫疾患、精神・神経疾患、心・肺疾患における学術および情報提供活動を強化しながら、私たちの薬剤を必要とする全ての患者さんが適切なタイミングでベストな治療を選択するための活動を続けています。
Johnson & Johnson Innovative Medicineに関する詳しい情報は
www.jnj.com/innovativemedicine/japan/をご覧ください。
将来に関する記述
このプレスリリースには、米国の1995年私的証券訴訟改革法で定義された「将来に関する記述」が含まれています。これらの記述は、製品開発及ニポカリマブの潜在的なベネフィット及び治療影響に関するものです。お読みの際には、これらの将来の見通しのみに依拠しないよう、ご注意ください。これらの記述は、将来の事象に関する現時点での予測に基づいています。
基礎となる前提が不正確であると判明した場合、あるいは既知もしくは未知のリスクや不確実性が現実化した場合、実際の成果は、ジョンソン・エンド・ジョンソンの予測や見通しと大きく異なる可能性があります。
リスクと不確実性には、これらに限定されるものではありません。臨床的成功及び規制当局の承認取得の不確実性をはじめとする製品の研究開発に伴う課題や不確実性、商業的成功の不確実性、製造上の問題または遅延、競合他社による特許取得、新製品開発、特許に対する異議申し立て、製品回収又は規制当局による措置につながる可能性、製品の有効性又は安全性に関する懸念、ヘルスケア製品及びサービスの購入者の行動や支出パターンの変化、世界的な医療改革などの適用される法律や規制の変更、医療費抑制への動きなどが含まれますが、これらに限定されるものではありません。
これらのリスクや不確実性、その他要因の詳細と一覧については、最新のForm10-Kに基づくジョンソン・エンド・ジョンソンの年次報告書の「将来予測に関する記述に関する注意事項(Cautionary Note Regarding Forward-Looking Statements)」、「リスク要因(Item 1A)」のセクション、またはジョンソン・エンド・ジョンソンの四半期報告書(From 10-Q)及び証券取引委員会へのその他の提出書類をご参照ください。
これら書類は、オンライン(
www.sec.gov,
www.jnj.com)でご覧いただくか、もしくはジョンソン・エンド・ジョンソン宛てにご請求ください。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、新たな情報や今後の事象・変化などに基づいて、将来予測に関する記述を更新する義務を負いません。
【本件に関するお問合せ先】
Johnson & Johnson Innovative Medicine
コミュニケーション&パブリックアフェアーズ部
E-mail:
JP-PR@its.jnj.com
参考資料
1. Noaiseh, G et al., Efficacy and safety of nipocalimab in patients with moderate-to-severe Sjögren’s disease (DAHLIAS):a randomised, phase 2, placebo-controlled, double-blind trial. The Lancet. Oct 2025; https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(25)01430-8/fulltext
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18. ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04882878. Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT04882878. Last accessed: October 2025.
19. ClinicalTrials.gov Identifier: NCT06449651. Available at: https://clinicaltrials.gov/study/NCT06449651. Last accessed: October 2025.
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